「ERP」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。
高そう、難しそう、使いにくそう、中小企業には向いていない。
こうしたイメージが日本では固定してしまっているかもしれません。
私自身、ERPが日本で広く知られ始めた2000年前後に、ERPコンサルタントとして複数のERPパッケージ導入に関わってきました。また、2010年代にSaaSサービスが急速に広がる中で、事務の立場として複数のSaaSを実際に使ってきました。
その両方を経験してきた立場から見ると、OdooはこれまでのERPとも、単体SaaSとも違う、非常にユニークなERPだと感じています。
この記事では、「Odooをまったく知らない方」に向けて、
- ERPとは何か
- なぜこれまでERPは中小企業にとってハードルが高かったのか
- その中でOdooは何が違うのか
を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
ERPとは何か(そして、なぜ難しかったのか)
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、
会計・販売・購買・在庫・生産・人事など、会社の基幹業務を一つのシステムで統合管理する仕組みです。
2000年前後、ERPは「ベストプラクティス」として注目され、多くの大企業が導入を進めました。しかしその一方で、
- 導入コストが想定以上に高くなる
- 導入に時間がかかる
- 業務をシステムに合わせる必要がある
- 使いにくい
といった話も広まり、ERP=大変、失敗しやすいというイメージが定着していきました。
特に中小企業では、
「身の丈に合わないERPを入れてしまい、現場の負担が増えてしまった」
という事例も少なからずあったと言われています。
中小企業のシステム化は、いま別の問題を抱えている
時代は進み、現在では多くのSaaSサービスが登場しています。
販売管理、請求、経費精算、勤怠、人事管理……
個々の業務をそれぞれシステム化すること自体は、以前よりずっと簡単になりました。
しかし一方で、中小企業の現場ではこんな問題も起きています。
- 同じ情報を複数のシステムに入力している
- ユーザ管理・権限管理がバラバラでセキュリティが不安
- SaaSを増やした結果、合計すると月額費用が気づかないうちに高額になっている
- 小さな業務のシステム化でも、選定プロセスに時間がかかる
- 全体像を把握している人がいない
- システムを刷新しても、結局「前と同じ使いにくさ」が残る
便利なSaaSの利用が増えた結果、業務が分断されてしまっているのです。
DXの3段階で考えると、今どこにいるのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、よく次の3段階で説明されます。
- 紙の作業をデジタル化する「デジタイゼーション」
- 業務フロー全体をデジタル化する「デジタライゼーション」
- デジタルを活用してビジネスモデルを変える「DX」
多くの中小企業は、
①と②の途中で立ち止まっているケースが少なくありません。
ここで重要になるのが、
業務全体がつながっているシステムです。
Odooは「手軽に始められるERP」
Odooは、中小企業向けのERPです。
SAPなどの大企業向けERPと比べると、導入のハードルが驚くほど低いのが特徴です。
- 初期に必要な設定が少ない
- デフォルト設定が用意されている
- まずは触って試せる
Odooは、言語・会社・ユーザを設定するだけで、とりあえず動かしながら理解を深めることができます。
一般的な大企業向けERPは、設定項目が非常に多く、パラメータ設定だけで多くの機能を実現できる反面、使わない機能についても「使わない設定」を一つひとつ行う必要があります。そのため、導入時の検討や設定に時間がかかり、導入後のマスタメンテナンスも煩雑になりがちです。
例えば、製造原価管理については、SAPでは、間接費を集計・配賦し、単価を自動計算する高度な機能がありますが、その分、複雑なマスタやパラメータ設定、大量のデータ入力が必要になります。
Odooでは、製造原価を
「部品表に登録した部材単価 × 数量」と「作業区ごとに設定した単価 × 作業時間」
というシンプルな計算方法で算出します。
そのため、厳密な原価管理を行いたい場合は、SAPの方が適しているケースもあります。
ただし、正確な原価を把握しようとすると、実際には多くの手間がかかります。
例えば電気代ひとつでも、事務所と工場で使用量を分けて把握したり、工作機械ごとの稼働時間や消費電力を集計したりする必要があります。こうした情報をすべて揃えるには、相応のコストと労力が必要です。
そのため、原価をどこまで厳密に管理する必要があるのか、かける手間と得られる効果のバランスを考えることが重要です。
Odooは中小企業向けのERPであり、機能はシンプルです。その分、手軽に使い始められるERPとなっています。
なぜスモールスタートが可能なのか
Odooは、モジュール(アプリ)単位で機能が分かれているため、
インストールした機能に関する項目だけが表示されます。
たとえば、
- 請求書アプリだけを使う場合、プロダクトなどのマスタ項目は最小限
- 後から販売・購買を追加すると、必要な項目が増える
という形です。
実際にOdooの画面を見ていただいた方が分かりやすいかもしれません。
下記の例は、請求アプリだけを有効にした場合のプロダクトマスタの画面です。
下は、請求アプリ以外に、製造、販売、購買、POSアプリなどを有効にした場合のプロダクトマスタの画面です。有効にしたアプリに関連するタブ・項目が増えているのが分かると思います。
「最初から全部考えなくていい」
これがOdooの大きな特徴です。
SaaSとERPの“いいとこ取り”
Odooは、
がちがちのERPというより、SaaSが連携された統合業務システム
という表現がしっくりきます。
- 各業務が自然につながっている
- あちこちに同じデータを入力しなくてよい
- 画面がWebベースで分かりやすい
SaaSの手軽さと、ERPの一体感、統合性を併せ持っています。
全部入れ替えなくてもいいERP
ERPというと、
「全部の業務システムを入れ替えないと意味がない」
と思われがちです。
しかしOdooは、一部業務だけの導入でも十分に利用価値があります。
例えば、
- 製造は既存システムを継続
- 請求・会計・人事などの周辺業務をOdooに集約
といった使い方も現実的です。
特に製造業では、すでにサプライヤーや顧客との連携が作り込まれていることも多く、
「全部入れ替え」より「整理と統合」に価値があるケースも少なくありません。
Odooの進化とこれから
Odooは毎年バージョンアップされ、
- AI機能の強化
- IoTやRFIDとの連携
- UIの改善
などが継続的に行われています。
定期的にバージョンアップを行うことで、新しい技術や機能を業務に取り込むことが可能になるため、意識しなくてもDXが進んでいくERPと言えるかもしれません。
Odooの課題も正直に
もちろん、課題もあります。
- 日本語が不自然な部分がある
- 日本独自の商習慣に合わない部分がある
これらは、海外製ERPであるがゆえの側面でもあります。ここ数年で、Odoo社でも日本市場向けに対応を進めてきているので、今後の進展に期待する部分でもあります。
オープンソースとOCAという強み
Odooはオープンコア型ERPであり、
OCA(Odoo Community Association) という世界的なコミュニティに支えられています。
日本向けの商習慣対応や、実務で必要な機能は、 このコミュニティによって補完・改善され続けています。
これは、 「ベンダー任せではないERP」 という大きな安心材料です。
詳細は、こちらのブログ記事をご参照ください。
まずは触ってみるのがおすすめ
Odooは、実際に触ってみると印象が大きく変わります。
「ERPって、こんなに軽いの?」
と感じる方も多いはずです。
以下の記事も参考に、ぜひ一度試してみてください。
Odooの体験利用・インストール方法
https://www.quartile.co/blog/odoo-1/odoo-68
WindowsパソコンにOdoo環境をセットアップする方法 ステップ by ステップ
https://www.quartile.co/blog/odoo-1/windowsodoo-by-119
OdooV14.0の基本設定
https://www.quartile.co/blog/odoo-1/odoov14-0-70
OdooV14.0の基本共通操作
https://www.quartile.co/blog/odoo-1/odoov14-0-71
Odooへのデータインポート方法
https://www.quartile.co/forum/1/odoo-288
まとめ:Odooは“今の中小企業にちょうどいいERP”
Odooは、
- ERPの重さ
- SaaSの分断
その両方に悩んでいる中小企業にとって、 現実的で、続けられる選択肢です。
「まずは小さく始めて、必要に応じて育てていく」
そんなERPを探している方に、Odooは一度知っておいてほしい存在です。
Photo by ThisisEngineering on Unsplash
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