2026年9月も、コタエルではOCAへの提案・改善・移行対応を継続しました。
9月は日本向けの合計請求書機能のOdoo 19.0対応がそろってマージされた月になりました。連絡先に読み仮名を持たせるモジュールもマージされ、コタエルのメンバー2名がOCAの日本のローカライゼーションのPSCに加わっています。あわせて、在庫と製造、設備保全、購買の各領域で新しい提案を進めました。
2026年9月の取り組み
合計請求書のOdoo 19.0対応
複数の請求書を1件の合計請求書にまとめる account_billing のOdoo 19.0対応が、9月にマージされました。5月に提案して以来、上流のマージを待っていたもので、日本向けの合計請求書機能を19.0で使うための前提が整いました。
続いて、合計請求書を日本の適格請求書として印刷する l10n_jp_summary_invoice と、前回からの繰越額を合計請求書に載せる l10n_jp_summary_invoice_carryover のOdoo 19.0対応もマージされました。l10n_jp_summary_invoice の19.0対応には、取引先の単位で合計請求の対象外を指定できる既定値も取り込んでいます。
Odoo 18.0側でも修正を重ねました。l10n_jp_summary_invoice では、帳票の合計欄の文言が計算を実行したユーザの言語で固定されてしまう問題を直し、取引先の言語で印字されるようにしました。l10n_jp_summary_invoice_carryover では繰越額の計算を見直し、振込先の銀行口座ごとに繰越額を求める修正をOdoo 19.0にも展開しています。
参考リンク:
https://github.com/OCA/account-invoicing/pull/2349
https://github.com/OCA/l10n-japan/pull/124
https://github.com/OCA/l10n-japan/pull/133
https://github.com/OCA/l10n-japan/pull/142
読み仮名の正規化
連絡先に読み仮名(カナ)を持たせるモジュールが、Odoo 19.0向けにマージされました。8月に l10n_jp_name_kana として提案したもので、レビューを経て、読み仮名を正規化する仕組みを担う l10n_jp_kana と、連絡先に項目を追加する l10n_jp_kana_partner_name の2つに分けています。
読み仮名は漢字で書かれた名前の並べ替えキーであり、検索キーでもあります。全角カタカナ、半角カタカナ、ひらがなが混在すると、並べ替えも検索も揺れます。このモジュールは保存時に読み仮名を設定した形式にそろえ、検索語も同じ形式にしてから照合します。入力したカナの種類を問わず、同じ連絡先が見つかります。
9月末には、商品の品目のように別のモデルの項目を引き継いで持つモデルでも、引き継ぎ元の形式で読み仮名を正規化する改善を l10n_jp_kana に提案し、10月初めにマージされました。商品向けの l10n_jp_kana_product_name と従業員向けの l10n_jp_kana_hr_employee_name は、引き続きレビュー中です。
参考リンク:
https://github.com/OCA/l10n-japan/pull/137
https://github.com/OCA/l10n-japan/pull/145
在庫評価と製造
在庫評価レイヤに払出期限を持たせる stock_valuation_layer_removal_date を、Odoo 18.0向けに提案しています。Odoo標準では、出庫した後の在庫評価レイヤに払出期限が残りません。生鮮品など期限のある商品を扱う会社が、在庫金額のうち期限切れ間近の分を、在庫評価レポートの絞り込みや集計で把握できるようにします。
製造オーダーに分析分配を割り当てる mrp_stock_analytic は、Odoo 18.0対応がマージされました。製造オーダーの分析分配が構成品の在庫移動に引き継がれるため、案件や部門ごとの原価分析で、分析分配を在庫移動ごとに入力し直す必要がありません。移行に合わせて、仕掛品(WIP)の計上にも分析分配を反映するようにしました。
ケースや袋のように、在庫の管理単位とは別に現場が数える副単位についても提案を進めています。ロット/シリアル番号を生成・インポートしたときに移動明細へ副単位を設定する stock_secondary_unit の改善と、製造でも副単位を使えるようにする新規モジュール mrp_secondary_unit を、いずれもOdoo 18.0向けに提案しました。mrp_secondary_unit では、袋や箱の数で書かれたレシピを、そのままの単位で部品表に入力できます。
参考リンク:
https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2443
https://github.com/OCA/account-analytic/pull/878
https://github.com/OCA/stock-logistics-warehouse/pull/2496
https://github.com/OCA/manufacture/pull/1855
確認と承認を経る運用
設備保全の領域では、Odoo 18.0向けに新規モジュールを2件提案しています。maintenance_equipment_tier_validation はOCAの承認基盤 base_tier_validation を設備台帳に適用し、複数の承認者が確認してから設備を有効化できるようにします。maintenance_request_done_readonly は完了したメンテナンスリクエストを編集できないようにし、点検や修理の記録を実施記録として残します。
工数の承認では、hr_timesheet_sheet の改善をOdoo 18.0向けに提案しました。これまではレビューポリシーで許可されたグループの全員が、すべての従業員のタイムシートをレビューできました。従業員ごとに承認者を指定できるようにし、上長が自分の部下のシートを承認する運用に合わせます。
在庫の移動では、stock_move_location の改善をOdoo 19.0向けに提案しています。保管場所からの移動ウィザードで即時在庫移動を禁止し、移送を必ず確認してから検証する運用にできる、会社単位の設定です。
参考リンク:
https://github.com/OCA/maintenance/pull/574
https://github.com/OCA/maintenance/pull/578
https://github.com/OCA/timesheet/pull/945
https://github.com/OCA/stock-logistics-warehouse/pull/2653
購買
外貨建ての購買前払金を、実際に支払った自国通貨の金額で計上する purchase_deposit_company_amount を、Odoo 16.0向けに提案しました。Odoo標準ではその日のレートで換算して計上するため、前払金の勘定が実際の支払額どおりに消し込まれず、差額が残り続けます。この差額は為替差損益ではなく取得原価の一部として、商品の明細行に配賦します。
複数の拠点を持つ会社向けに、発注書で自社の請求先住所を選べる purchase_company_invoice_address も、Odoo 16.0向けに提案しています。Odooでは会社に紐づく住所は1件のため、仕入先に対して、どの拠点宛てに請求書を送ってほしいかを発注書で伝えられませんでした。選んだ住所は発注書と見積依頼書に印字されます。
参考リンク:
https://github.com/OCA/purchase-workflow/pull/3161
https://github.com/OCA/purchase-workflow/pull/3177
移行対応とそのほか
PDFレポートの任意の位置に画像を挿入できる report_positioned_image は、Odoo 19.0対応がマージされました。続けて、条件に合うレコードにだけ画像を印字できるようにする改善も提案しています。特定の顧客向けの帳票にだけ社印を載せる、といった使い方ができます。
定期的に届くファイルを無人で取り込むための基盤として、data_import_log と data_import_log_fs をOdoo 19.0向けに提案しました。取り込んだファイルごとに記録を残し、行ごとに処理を分けることで、エラーになった行だけを切り出して送り手に返せるようにします。
レコードの複製と削除のアクションの表示をモデルごとに制限する base_view_action_visibility はOdoo 16.0への対応を、商品ごとに公開開始日と終了日を設定してショップへの表示を制御する website_sale_product_publish_date はOdoo 18.0への対応を、それぞれ進めています。
参考リンク:
https://github.com/OCA/reporting-engine/pull/1193
https://github.com/OCA/server-tools/pull/3744
https://github.com/OCA/server-ux/pull/1330
https://github.com/OCA/e-commerce/pull/1111
コミュニティでの役割
コタエルのリンと神田が、OCAの日本のローカライゼーション(l10n-japan)のPSCメンバーに加わりました。PSC(Project Steering Committee)は、プロジェクトの方針と品質に責任を持ち、プルリクエストのマージを判断する委員会です。2024年1月以降のレビューとマージの実績をもとに選任され、l10n-japan のPSCは3名になりました。
9月には、コタエルのノブがベルギーで開催されたOCA DaysとOdoo Experienceに参加し、月末のOdooオープントークで、そこで得た知見を共有しました。2つのイベントの違いは別の記事にまとめています。
参考リンク:
https://github.com/OCA/repo-maintainer-conf/pull/191
https://www.quartile.co/blog/odoo-bits-pieces-1/odoo-two-communities-oca-days-odoo-experience-2026-2262
担当者よりひとこと
福岡もだいぶ涼しくなってきました。秋を感じています。
8月の報告で触れた account_billing の19.0対応が、9月にようやくマージされました。続けて l10n_jp_summary_invoice と繰越額のモジュールもマージされ、日本向けの合計請求書をOdoo 19.0でもOCAのブランチから使えるようになりました。
同じ月に、リンと私が l10n-japan のPSCに加わりました。レビューとマージをこれまで以上に自分たちで進められるようになる一方で、マージを判断する立場には品質への責任も伴います。
日本の商習慣に合ったモジュールを、より早く、確かな品質で届けられるよう、コミュニティの皆さんと一緒に取り組んでいきます。
[2026年9月] Odooコミュニティ活動とコタエルの取り組みのご報告