[2026年7月] Odooコミュニティ活動とコタエルの取り組みのご報告

承認履歴を残す仕組みと在庫まわりの実務対応
2026年8月15日 by
[2026年7月] Odooコミュニティ活動とコタエルの取り組みのご報告
Yoshi Tashiro (QRTL)

2026年7月も、コタエルではOCAへの提案・改善・移行対応を継続しました。

7月は、OCAが生成AIの利用に関する方針を公開し、コミュニティとしてAIとの向き合い方を示した月でもありました。コタエル自身の取り組みとしては、多段階承認の履歴を監査に耐える形で残すための提案と、在庫の実績日や在庫評価といった、会計処理の裏づけになる領域の対応が中心です。あわせて、Odoo 19.0に向けた移行対応も引き続き進んでいます。

2026年7月の取り組み


承認履歴を残す仕組み

あらゆる伝票に多段階の承認フローを組み込める base_tier_validation では、伝票がキャンセルされたり下書きに戻されたりすると、それまでの承認記録が削除されます。誰がいつ承認したかが残らないため、監査で経緯をたどりたい場面では情報が失われていました。

そこで今月は、承認記録を削除する処理を専用のメソッドとして切り出す改善を、Odoo 16.0向けに提案しました。他のモジュールからこの処理を差し替えられるようになります。

あわせて、その仕組みを使って承認・却下のレビューを削除せずアーカイブする base_tier_validation_review_history を、Odoo 16.0向けの新規モジュールとして提案しています。レコード上に読み取り専用の履歴を表示し、専用メニューから全レコードのレビューを横断的に確認できます。

参考リンク:

https://github.com/OCA/server-ux/pull/1307

https://github.com/OCA/server-ux/pull/1311

在庫の実績日と入出庫の運用

実際に入出庫があった日を記録する stock_move_actual_date は、Odoo 17.0対応がマージされました。Odooへの計上が実際の入出庫より後になる場面でも、仕訳の日付を実態に合わせられます。

18.0向けには、在庫評価の検索画面で実績日によるグループ化を追加する改善がマージされました。さらに、実績日を設定済みの入出庫にあとから追加された在庫移動にも実績日を引き継ぐ修正を提案しています。

当初の計画日を保持する stock_move_original_date は、Odoo 16.0対応がマージされました。入荷予定日が後から変わる運用でも、最初に見込んでいた日付が残ります。

在庫調整では、「すべて適用」ボタンを既定で非表示にする stock_inventory_hide_apply_all がOdoo 18.0向けにマージされました。一行ずつ確認して適用する運用を徹底したい現場に向けたモジュールです。

参考リンク:

https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2299

https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2400

https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2262

https://github.com/OCA/stock-logistics-warehouse/pull/2612

在庫評価まわりの提案

在庫評価レイヤに仕入先を保持する stock_valuation_layer_vendor を、Odoo 18.0向けに提案しています。グループ会社から仕入れた在庫に含まれる内部利益を、連結ベースの評価から直接フィルタで除外できるようになります。

移動平均評価のプロダクトについて、仕入返品時にもとの仕入金額で在庫を払い出す stock_account_avco_return_origin も、Odoo 16.0向けに引き続き提案しています。標準の挙動のままでは監査上の論点になり得るため、実務上の重要度が高いテーマです。

参考リンク:

https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2394

https://github.com/OCA/stock-logistics-workflow/pull/2374

受注・請求業務の改善

受注明細ごとに顧客の注文番号を持たせる sale_order_line_client_order_ref は、請求書明細の説明に注文番号を差し込む設定などを加えた改善が、Odoo 18.0向けにマージされました。

自動ワークフローのフィルタ条件で当日基準などの動的な日付を使えるようにする sale_automatic_workflow の改善は、Odoo 18.0向けにマージされたのち、19.0への対応もマージされています。

このほか、請求書明細に商品名が重複して表示されないようにする sale_line_name_option の修正と、ポータルの受注検索で親会社名も検索対象にする portal_sale_order_search の改善がマージされました。会社ごとの設定に基づいて請求書の受取銀行口座を自動で決める account_move_partner_bank も、引き続き提案しています。

参考リンク:

https://github.com/OCA/sale-workflow/pull/4118

https://github.com/OCA/sale-workflow/pull/4461

https://github.com/OCA/account-invoicing/pull/2198

Odoo 19.0への対応とその他

ファイルからのデータ取込をジョブキューで自動処理する connector_importer と、任意のフォームビューに条件付きメッセージを表示できる web_form_banner は、Odoo 19.0対応がマージされました。

CSVインポート時に名前やメールなどの項目で既存レコードを照合できる base_import_match、QWebビューの文言をモジュール開発なしに置き換えられる template_content_swapper も、19.0対応を進めています。

また、OdooからAIツールを扱うための ai_tool と ai_oca_mcp について、権限まわりの修正をOdoo 16.0向けに提案しました。Odoo本体にも、受注に紐づく伝票が取り残されないようにする修正を提案しています。

参考リンク:

https://github.com/OCA/connector-interfaces/pull/185

https://github.com/OCA/web/pull/3309

https://github.com/OCA/server-backend/pull/467

https://github.com/odoo/odoo/pull/275805

OCAにおけるAI利用方針の整備

7月、OCAが生成AIの利用に関する方針を公開しました。リポジトリへの追加が7月8日、OCAの実情に合わせた改訂が7月18日、公式ブログでの案内が7月20日です。

AIの利用そのものを禁じるものではなく、成果物の責任は人が持つという原則を明確にする内容です。AIが関与したコミットには関与の度合いを問わず Assisted-by: を付けて開示すること、AIを Co-authored-by: に記載しないこと、無監督のエージェントによる作業は認めないこと、そして自分で説明できないコードは提出しないことが定められています。

コタエルでもClaudeやCodexといったAIツールを開発に利用しており、この方針を受けて社内のルールを見直しました。

参考リンク:

https://github.com/OCA/.github/blob/master/AI_POLICY.md

https://www.odoo-community.org/blog/news-updates-1/new-ai-policy-248

コミュニティへの参加を広げる取り組み

7月31日のOdooオープントークでは、OCAへの貢献の始め方を「OCA活動への参加方法」として発表しました。発表資料は こちらに掲載しています。Issueや翻訳、小さなPRといった入口から、CLAの提出、マージまでの流れ、生成AIポリシーまでをまとめました。

今回はOdoo社とOdooパートナー1社にご参加いただき、マーケットの共通課題にコミュニティとしてどう向き合うかについて活発に意見が交わされました。次回は8月28日の開催です。開催要領は こちらよりご確認ください。

担当者よりひとこと


AIによりコードを書く作業の工数は大幅に削減されています。知見を得るためのチャネルが、コミュニティでの協働作業からAIの活用に置き換わっている側面もあり、そこには一抹のさびしさも感じます。

AIを取り入れた開発では、設計とレビューをしっかりする能力やプロセスの重要性がより高まっています。コードを書くステップが劇的に効率化された結果、ボトルネックはその前後の工程に移りました。

一方で、プルリクエストの作成やレビューをAIで自動化し、大量に投稿する動きも現れています。アウトプットを最大化しようとする方向と、責任をもって品質を担保しようとする方向のあいだで緊張が生まれるのは、コミュニティのルールがAI活用を前提としたものに追いついていない過渡期ならではだと感じます。今回のAIポリシーは、その整理に向けた一歩でもあります。

コタエルでも、AIによる新たなパラダイムのもとで提供価値を最大化すべく、コミュニティで共有資産を積み上げるところは堅持しつつ、チーム内では働き方を大きく変えていっているところです。

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Yoshi Tashiro (QRTL) 2026年8月15日
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