「いつもお世話になっております」は書かないことにしています

当社なりの働き方改革
2017年12月30日 by
「いつもお世話になっております」は書かないことにしています
Yoshi Tashiro (QRTL)

メールの書き出しのことです。当社では随分前から基本的に「いつもお世話になっております」でメールを書き出すのを避けています。


当社コンサルタントのTim(香港人、日本語可)が入社したての頃、お客様へのメールで「いつもお世話になっております」という書き出しでメールをしたためていたのを見て、敢えてそれは止めたほうがよいという話をしました。


些細なことではありますが、「なぜ?」と思われる人(あまりいないかもしれませんが)のために、以下、私なりの理由です。

1.「いつもお世話になっております」は価値を生まない


当社の設立目的は、「より柔軟で費用対効果の高い業務管理システムサービスを提供すること」です。この目的にもある費用対効果の高いサービスを追求するには、システムに直接関わることのみでなく、業務の中で価値を生まないものは極力省かなければなりません。そうしなければ看板に偽りありです。


「いつもお世話になっております」という言葉は、実態としてかなり形骸化されていると思います。当社に初めてメールを送ってくださる方であっても、よく「いつもお世話になっております」という書き出しをされています。素直な感想として、「会ったこともないのに...」と思います。言いませんが。


実際によくやり取りをしているお客様から「いつもお世話になっております」という書き出しでご連絡をいただくこともよくあります。当社のサービスに価値を感じていただいていて、その表れとしてこのようにコメントいただいているのであれば、それはそれでありがたいことです。


翻って、当社からお客様に連絡さしあげる際に、「いつもお世話になっております」と書くことに価値はあるのでしょうか?「そうしないと失礼なのではないか?」 - そういう見方も当然あると思います。ただ、お客様が求めているのはそういった礼節よりも、業務やシステムの課題を解決することのはずです。「いつもお世話になっております」と1万回言うよりも、困っていらっしゃる点を1つでも解決することの方が価値があります。

2.「いつもお世話になっております」と書くと少しコストがかかる

 

「いつもお世話になっております」とタイプするのに、10秒かかるとします。メールを1日10件書くとして、1年が180営業日とすると、年間18,000秒=5時間です。1時間あたりのコストが3,000円だとすると、15,000円です。10人いれば、年間15万円です。15万円あれば、Odooのちょっとしたカスタマイズがいくつかこなせます。

大した金額ではないのかもしれません。ですが思いがけず15万円懐に入ったとしたら、私だったら人に見られない場所で小躍りします。

3.「いつもお世話になっております」と書くとメッセージが少し希薄化する

 

業務でメールを書くとき、そこには必ず何かしら目的があります。「いつもお世話になっております」という言葉には、おそらくその目的達成に資する情報は含まれていません。それは即ち、「いつもお世話になっております」と入れると、ほんの少しではありますが、本来伝えるべきメッセージが希薄化することにほかなりません。

そもそもメールのようなテキストでの情報連携では、メッセージを100%の密度で相手方に伝わることは困難です。ですので、伝えたいメッセージとは関係ない情報は、極力含めないべきです。

4.「いつもお世話になっております」だと日本に閉じてしまう

 

全ての言語・文化を知っているわけでもなく、英語や中国語との比較でということになるのですが、「いつもお世話になっております」という言い回しはかなり日本特有のものです。英語や中国語のビジネスメールでは、まずこのようなことは言わないと思います。


Googleで検索窓に「いつもお世話になっております」と入れると、「いつもお世話になっております 英語」が提案されてきます。きっと検索する人が多いのでしょう。

image 


因みに、あわせてご丁寧に「Always I am indebted (English)」と出てきています。もし日本が少し特殊であることに疎い英語圏のビジネスパーソンがこの書き出しの英文メールを受け取ったら、「この人は金を無心してくるのか」と思われるかもしれません。注意したほうがよいですね。


特殊性というのは、どの国や地域でもあり、我々事業を創る人間はマーケットの特殊性と上手く付き合っていかなければならないのですが、基本的に特殊性は壁を作ります。海外の企業が日本のマーケットにアプローチしにくくなるのと同時に、日本の企業も海外のマーケットにアプローチしにくくなります。日本というこれから縮小していくマーケットでこういった壁を残していると、様々なところでガラパゴス化の状況が生まれます。観光資源としてはそれが面白いという面もあるかもしれませんが、ほとんどの産業ではガラパゴス化がもたらすのはジリ貧なのではないでしょうか。


ですので、日本でしか通用しない慣習は、特にビジネスの場ではそうすべき理由がないのであれば、やめてしまった方がよいと考えます。

5.「いつもお世話になっております」を続けているといろんな非合理を見逃す

 

「いつもお世話になっております」が合理的か否かを考えると、上述の理由のとおりおそらく合理的ではないです。ですが、ほとんどの人は「そういうものだから」「言っておいた方が無難だから」ということでメールに書いているのが現状かと思います。


これまで続けてきた慣習を変えることには多少の心理的抵抗がつきまといますが、「いつもお世話になっております」を止めるのは、その気になれば誰でも即座に実行に移せることです。自らの意思で起こしうるあらゆる変化の中でも、かなり難易度が低い部類のものではないでしょうか。


「いつもお世話になっております」に何かしらの合理性を見出している場合は別として、そうでなく惰性で続けている場合、これを放置していると、何か非合理な慣習や状況に気づくことがあったとしても、自らの意思でそれを変えるためにアクションをとることができなくなってしまわないでしょうか。

まとめ

 

ということで、当社からのメールが飾りっ気がなく単刀直入すぎるのでは?と感じられることがありましたら、上記のような理由で敢えてそうしているということで、ご理解いただければ幸いです。


なお、論点を明確にするために、いささか「いつもお世話になっております」の”非合理”な点ばかり強調した感がありますが、私の考えはあくまで1つの見方に過ぎませんし、実際のところ「いつもお世話になっております」と言ってくださるお客様は頭が下がる思いのする方ばかりです。こんな見方もあるのかもねと、笑い飛ばして良い新年をお迎えいただければと思います。そして我々は、「いつもお世話になっております」という思いをいだきつつもメールには書かず、不器用ながらも少しずつ、提供できる価値を大きくしていけるよう努力してまいります。

「いつもお世話になっております」は書かないことにしています
Yoshi Tashiro (QRTL) 2017年12月30日
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