良いシステムを届けたいと願っている

2025年5月2日 by
良いシステムを届けたいと願っている
Tatsuki Kanda (QRTL)

ほぼそのままタイトルに結論を書いた。この通りで良いシステムを届けたいと本気で願っている。そのために僕個人の考えをこのブログにて紹介しようと思う。

価値あることをしたい!

僕は大学時代に今でいう「データサイエンス」を専攻していた。その当時、繰り返し言われていたのは「価値創造」というキーワードだ。どれだけ高度な分析をしても、それが意思決定につながらなければ、価値は生まれていないということだ。分析手法や技術はあくまで“道具”にすぎず、最終的には何かしらの行動を支援し、意味ある結果をもたらさなければ意味がない。

ERPシステムの導入にも、同じことが言える。どんな機能があるか、どこまでカスタマイズできるかに目を奪われるのではなく、何が本当に価値あるものなのかを見極め、ビジネス的な感覚を持って向き合わなければならない。特にOdooのような柔軟にカスタマイズできるシステムでは、「やろうと思えば何でもできる」状態に陥りやすい。要望を言われたとおりに実装するのは、確かに導入側としては楽に感じられるし、便利にも見える。しかし、それが本当に価値あることなのかは冷静に判断する必要がある。

カスタマイズの増加は、同時に保守すべきコードの増加を意味する。つまり、将来的な技術的負債を生み出していることになるのだ。これはユーザ側もベンダー側も、まずは正しく理解しておくべき事実だと強く感じている。僕自身、常にこの意識を持ちながら、カスタマイズコードを書くようにしている。

ユーザを困らせる設計を好きになれない

ユーザに負担をかけるシステムというのは抵抗感がある。ERPとは直接関係しない例かもしれないが、たとえば「設定を変更しないとリボ払いがデフォルトになるクレジットカード登録画面」や、「登録は1クリックでも解約が極めて面倒なサブスクリプションサービス」などだ。

ERPベンダーにおいても、似たようなロックインを意図した設計が現実に存在する。また、「わかった気にさせる説明」だけをして本質から目を逸らすような対応も見受けられる。こうしたアプローチは、ユーザ側に負担をかけて、長期的な信頼関係を築くうえで、決してプラスにはならないと考えている。このような導入でシステムをお客様に届けたくない。

ユーザを困らせる事態を回避するためには

では、こうした「よくない状態」を回避するにはどうすればよいか? まずは技術に溺れないことである。技術はあくまで道具であることを常に頭で考える必要があり忘れてはいけない。自分がカスタマイズしたモジュールが正しく動くのはたしかにめちゃくちゃ楽しい。実装されるとその部分は便利になる。しかし同時に必ず負債を生み出している。

ユーザが希望しているものすべてにそのまま答えてはいけない。その先にある要求を見極めて数ある方法の中からその時最適だと思うのアプローチを出していくのだ。そうすることでより価値をユーザに届けられる。だからこそ何度もしつこく確認することもあるし、最終的にまったく別の解にたどり着くこともある。でもそうなるのが当たり前だと思うのだ。(むしろコンサルの仕事の価値はここだと信じている)

技術的な観点から言えば、オープンソースソフトウェア(OSS)を使うことが非常に有効だ。オープンソースはまずコードを公開しているのでベンダーにロックインする事態を回避できるという点で大きな利点がある。さらにカスタマイズにおいても全世界のコミュニティからフィードバックを受けられるため必然的にコードの品質があがりやすい。そしてバージョンアップのタイミングでもコミュニティ全体で負荷を分担できるため、効率がよくなる。どう考えてもコミュニティの資産を使用することは理にかなっている状態だ。オープンソースのソフトを使用しているのにコミュニティの資産を使っていない状態なら、その状態自体を大いに疑った方がよい。あきらかに筋が通っていない状態だ。

別に僕は「オープンソースの活動大好き!!」ってわけではないが、どう考えても使うのが理にかなっているし、もっと盛り上がるために貢献していきたい思う。

まとめ

システム導入や開発において、僕が何より重視しているのは「価値を届けること」である。そのためにユーザの要望をそのまま実現するのではなく、その背景にある本質的な課題を見極め、最も適した方法を選ぶことが重要である。ときに要望とは異なる提案を行うこともあるが、それこそが持続可能で有益なシステムを生み出す道だと考えている。

オープンソースの活用は、その実現においてとても合理的である。透明性があり、コミュニティによる改善が継続され、将来的な柔軟性も確保できる。過剰なカスタマイズによる技術的負債を抑えるためにも有効な選択肢だ。

今後も僕は、本質的な価値を届けるようなシステムの構築に取り組んでいき、ユーザへと貢献していきたいと思う。

良いシステムを届けたいと願っている
Tatsuki Kanda (QRTL) 2025年5月2日
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