コタエルはOdooの「ラーニングパートナー」になりました

Odoo社のサービスが追いつくまでの暫定措置
2018年11月5日 by
コタエルはOdooの「ラーニングパートナー」になりました
Yoshi Tashiro (QRTL)

私たちコタエルは2013年4月より、Odoo社のパートナーとして、日本市場向けにOdooサービスを展開してまいりました。かれこれ5年半なのですが、最近Odooのパートナープログラムに「ラーニングパートナー」なるカテゴリが追加されたことを機に、「オフィシャルパートナー」から「ラーニングパートナー」へ、自らのカテゴリを変更いたしました。

Odoo テキストと画像のブロック

なぜそのような判断に至ったのか。端的には「オフィシャルパートナー」に価格分の価値を見いだせなかったということがあります。ご存知でない方も多いと思いますが、一定のそれほど難しくない条件をクリアし、料金を支払えば、誰でもOdooのオフィシャルパートナーとなることができます。

「価格分の価値を見いだせなかった」点については、「ラーニングパートナー」と「オフィシャルパートナー」の違いをもとに説明すると分かりやすいかと思います。「オフィシャルパートナー」のみ享受できるとされるメリットは、次の画像の赤枠の部分で、それぞれ実態はどうなの?というところを私の経験をふまえコメントします。

「ラーニングパートナー」と「オフィシャルパートナー」の違い

Odoo CMS - 大きな写真

上の画像の赤枠部分が、「オフィシャルパートナー」のみに提供されるサービスです。

画像はこちらのページより。

Visibility on Website(odoo.com での会社紹介掲載)

こちらの前提として、「Odooに興味をもった方々は、まずOdoo社のウェブサイトを訪問してそこからローカルパートナーを探す」という行動パターンが想定されています。ですが、現状Odoo社のウェブサイトが日本語化されていない(今後されるという話も聞いていますが)中で、これまでこの行動パターンどおりに動いた方は多くなかったと踏んでいます。

実態は正確に把握していませんが、日本の皆さまがOdoo社のウェブサイトで私たちを見つけられるケースはほとんどなかったのではないかと思います。

今後Odoo社が日本語ができるリソースを確保した上でウェブサイトの日本語化を推し進めるのであれば、この状況は変わるかもしれませんが、私たちはここに大きな価値を見出すことができませんでした。


Get Leads(リード斡旋)

odoo.com でトライアルのアカウントを作成したり、製品をダウンロードしたりすると、Odoo社のシステムでリードが作成されます。本来は、まずOdoo社からリードがフォローに値するかチェックがあり(供給側の観点での表現になっており、申し訳ございません...)、フォロー対象で且つOdoo社のSaaSサービスの顧客にはならないだろうと判断されると、パートナーにリードが紹介されるという流れが想定されています。ですが、Odoo社内部に日本語ができる担当者がいないという事情もあり、日本市場向けにはこの流れが機能していないという状況が続いていました。 


Dedicated Account Manager(専任のアカウントマネジャー)

各オフィシャルパートナーには、Odoo社のアカウントマネジャーがついて、特にOdooエンタープライズの販売に関する手続やその他諸々につき相談に乗ってくれます。また、パートナーと二人三脚での案件獲得を目指して、アカウントマネジャー自ら顧客との商談に参加したりもするそうです。

こちらのサービス、Odooの事業を始めたてで経験の浅いパートナーにはよいオンボーディングとなるのだろうと思います。ですが私たちに関しては、私たちの方がアカウントマネジャーよりも、Odooのこと(少なくともプロダクトについて)もマーケットのこともよく知っているため、案件獲得のためにアカウントマネジャーからのサポートが必要な場面は、これまで実質皆無でした。逆に、私たちからアカウントマネジャーへ諸々アドバイスすることの方が多かったというのが実情です。

マーケットのニーズをOdoo社に伝える一つのチャネルとしての意義を見いだせなくもなかったかもしれませんが、私たちが問題提起せずにオフィシャルパートナーを継続することは、逆にOdoo社が現状のサービス構造の問題点に気づく機会を奪ってしまうことにもなるのかもと考えました。


Sponsoring of Roadshows(ロードショーのスポンサー)

Odoo社は近年積極的に、「ロードショー」というOdooのプロモーションイベントを、パートナーとともに世界各都市で開催してきています。このイベント、中には失敗例もあるものの、参加したパートナーからの評価は概ねよいらしく、このイベントからプロジェクトを数件受注したなどの声も、ちらほらと聞こえてきます。オフィシャルパートナーには、このロードショーのスポンサーとなる資格が与えられます。

日本ではこちらで報告しましたとおり、今年3月に初のロードショーイベントが東京で開催されました。当時香港メインで活動していた私たちは、こちらのイベントを日本のお客様に直接会って話ができる貴重な機会と捉えて参加し、私たちのプレゼンテーションも好評価をいただきました。ですが、結果として案件の受注に至るケースは、残念ながら1件もありませんでした。

イベント参加の準備にはそれなりに手間がかかりました。関係者一同会しての打ち合わせでのファシリテート、イベントページや案内メールの翻訳、日本という場所に関する注意点の説明等、通常のイベント参加準備の他に、ここでも言葉や文化の壁(Odoo社には日本語ができる人がいない)を乗り越えるための、追加の作業が発生しました。

また、ともに参加した他のOdooパートナー各社との足並みが必ずしもそろっておらず、このイベントのために分担して作業をすすめるよう合意したOdooの日本語化作業は、結果として大部分を私たちが進め、一旦全ての関係者で合意したイベント開催日程も他のパートナーの都合で延期となる事態が発生するなど、Odooを盛り上げるために各社協力するという点については残念な思いをしました。

そのため、ロードショーイベントへの参加は、一度経験するという意味で悪くはなかったものの、ビジネス視点では私たちはコストをかけながらも結果が出せなかったため、次に参加の機会があったとしても慎重にならざるを得ないと考えていました。


Offshore Developments(オフショア開発)

割とリーズナブルな価格でOdoo社のインドの開発者に開発作業を頼めるというサービスです。まとまったボリュームの開発作業を外注したいニーズがある場合は、それなりに使えるのかもしれません。ですが私たちはこのサービスをこれまで利用したことがありません。特にこれといった機会がなかったためです。

Odooの歩き方の資料で説明のとおり、私たちはアジャイルなアプローチでOdoo導入を遂行します。短期間のイテレーションを回しながらシステムを完成形に近づけていくスタイルをとる場合、お客様と会話するコンサルタントと、実装するエンジニアや開発者の役割が完全に分離していると、コミュニケーションコストの比重が大きくなり、効率がよくありません。私たちのチームではお客様と会話するコンサルタント全員が、開発含めOdooの実装作業ができるため、外部のリソースに頼りたいという状況があまり起こりません。コミュニケーションノード数が最小化できているため、伝言ゲームで意思疎通が困難になるケースも防げていると思います。

また日本のお客様へのOdoo導入は、多くの場合日本語での作業となるため、英語でのコミュニケーションが前提となるオフショア開発にはどうしても翻訳のコストがつきまとい、オフショア開発のメリットが発揮できる条件も限られてきます。

Odooの経験の浅いパートナーが手っ取り早く外部リソースのサポートを得たいときには有効かもしれませんが、私たちがこちらのサービスを利用したくなることは、あまりなさそうに思えました。



ということで、今回は一旦「オフィシャルパートナー」を離れて「ラーニングパートナー」となることにしたのですが、このことにより私たちが提供するサービスに何かしらの制約が生じることはありませんので、どうぞご安心ください。むしろ「ラーニングパートナー」に変更することで抑えることができたいくばくかのリソースを、プロダクトの日本語化や他のコミュニティ活動に充て、Odooの日本での導入をよりやりやすくすることで、Odooのエコシステムに貢献していきたいと考えています。

なお、私たちとしては今回の措置はあくまで暫定的なものと位置づけており、Odoo社が日本市場のパートナー向けのサービスを目に見える形で改善するようであれば、また「オフィシャルパートナー」に戻るつもりです。早いうちにそうなる日が来るよう、Odoo社への働きかけ、アドバイス提供も、微力ながら継続してまいります。


「ラーニングパートナー」に自らを格下げ(?)した私たちですが、アジャイルなスタイルでお客様の課題を解決するERPコンサルタント/エンジニアを募集しています。これまでになかった高付加価値の業務システムサービスを作ることに興味がある方、ぜひどうぞ!

コタエルはOdooの「ラーニングパートナー」になりました
Yoshi Tashiro (QRTL) 2018年11月5日
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